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レビュー「眠れない夜に」

2日連続になりますが、鉄は熱いうちにと言いますし、レビュー2作品目行ってみます。九州壇氏さんの「眠れない夜に」。作品の存在自体はずっと知っていましたが、やっとプレイできました。


眠れない夜に

眠れない夜に準推薦
製作者/九州壇氏(ダウンロード
ジャンル/幼馴染三角関係恋愛ノベル
プレイ時間/1時間15分

大学生の淳は、幼馴染の茜と、夜のドライブに出かけていた。以前と様子が変わってしまっても、茜は茜だ。そう言い聞かせながら、車を走らせる淳。時折昔の事を思い出しながら、車は夜の都市高速道路を走り抜けて行くが、眠れない夜は、まだ長かった。中盤以降の展開、巧妙な伏線から目が離せない、青春ノベル。

ここが○

・些細なところまで巡らされた巧妙な伏線。
・中盤以降の意外な展開。
・リアリティのある描写。

ここが×

・なんだかすっきりしない感のあるラスト。
・所々ウェイトが多いのが少し気になる。
・演出にもう少し凝ってもいいかも。

■目覚めの朝は君と二人で

この作者さんの作品をレビューするのは、これで7本目です。初期の頃から比べると、文章にしても、物語の作り方にしても、非常な進化が感じられます。それでいて、この作者さんならではの味は今作でも健在です。この作品は、いわゆる「幼馴染もの」ですが、切り口がちょっと変わっています。

切り口が変わっていると言っても、プロット自体がそこまで斬新という訳ではありません。ネタバレになるので書けませんが、今作の根幹を占めるシナリオ作りの手法は、過去の他作品にも散見されます。

眠れない夜にしかしこの作品は、巧妙な伏線の張り方や、キャラクターの心情描写の繊細さで、プレイ時間以上のボリュームを感じさせてくれる一昨となっています。実はこの作品、タイトル通り「一晩」の物語なんですよね。しかし、過去回想の入れ方・絡め方が上手く、実際のシナリオ量以上のボリュームを感じさせてくれます。

また、リアリティのある描写が上手いです。茜の病気についての描写もですが、心情描写にも妙な現実感があります。もちろん、描写の全てにリアリティが高い訳ではなく、ちょっと矛盾を感じさせるような箇所がなくもないんですが、全般にしっかり描かれているため、そこがあまり気になりません。

特にメインのトリック(?)は、手法自体は使い古されたものながら、淳が自分の願望を込めて現状を曲げて理解した、という設定は、説得力がある上に、前半にあまりヒント(?)がなくても唐突感がないという、非常に卓越した手法だったと思います。この辺り、前半の些細な描写も伏線になっていて、感心する事しきりでした。

構成も上手く、登場人物が基本的に3人しかいないのに、特に後半は一気に読ませてくれます。ラスト近くの、茜との最後のドライブシーンは、屈指の名シーンでしょう。描写が全般にリアリティがあるので、あのシーンにも非常に現実感があって、感動させてくれます。

また、茜と香澄の姉妹のキャラクター分け、二人の微妙な関係の描写がとても良いです。姉へのコンプレックスから素直になれない香澄。妹を大事に思いながら一歩踏み出せない茜。いい姉妹です。二人の絆の描写が後半の肝となりますが、シナリオ自体もさる事ながら、過去回想含め、二人の関係の変化、絆の描写がとても素晴らしい。主人公の淳が、影が薄く感じるほどです(笑)。

ただ、終わり方が少し釈然としない感があります。私の好みとしては、オチはきっちり決着がつく方が好みなのです。ラストで、屋台のおでん屋のちょっとおちゃらけた日常描写が入ってきたので、余計そう感じたのかも知れませんが(全部解決したならともかく、結局メインの事件は解決してないしなあ。でもあそこの描写自体は好きです)。

そこは読み手に委ねようという事なのかも知れませんが、せっかくなのでもう一歩先まで踏み込んで欲しかった気がしなくもありません。今回の物語の原因が、何ら動いていないので、その意味ではあと一歩足りない感じを覚えました。もっとも、この物語においてそんな事を言うのは、無粋かも知れませんが……。

それでも、作者さんのこだわりが随所に感じられる一本でした。プレイ時間は1時間15分〜30分くらいで選択肢もありませんが、読後は時間以上の満足感を感じさせてくれます。ツールはNScripterで、デフォルトのままですがプレイにストレスはありません。私は休日の真昼にプレイしてしまいましたが(笑)、タイトル通り眠れない夜にプレイする事をお勧めします。

レビュー「妹のコミュ力が皆無な件。」

こんにちは。NaGISAです。この度、この場をお借りして、少しばかりノベルゲームのレビューを書いてみる事にしました。まずは、今回の企画参加者の皆さんの作品を、いくつかレビューしてみようと思います。

レビューを通じて、企画に興味を持ってくださる方が少しでも増えれば、幸いです。以前「NaGISA net」というサイトでレビューを書いていたので、その形式のまま書いてみます。



妹のコミュ力が皆無な件。

妹のコミュ力が皆無な件。準推薦
製作者/さつき晴れ(ダウンロード
ジャンル/妹更生奮闘ノベル
プレイ時間/20分

家入こもりは、超がつくほどの人見知り。今日は高校の入学式だというのに、学校に行こうともしない。見かねた兄の明人は、無理やりこもりを学校に引っ張っていき、何とか友人ができるように、陰ながら奮闘するのだが、当のこもりはまるでやる気なし。果たしてこもりに無事友達ができ、楽しい高校生活を送れるのだろうか?

ここが○

・脇キャラにもちゃんとしっかりした役割がある。特に優子はいいキャラ。
・主人公である兄の頑張りに共感できる。
・ちゃんとこもりが自分の力で成長する。

ここが×

・こもりの性格は、ちょっと極端過ぎるかも。
・主人公にも、ちょっとはいい目を見せてあげても良かったかも。
・タイトルにひねりがあっても良かったかも。

■頑張るお兄さんに花束を

いわゆる「妹もの」作品っていっぱいありますが、バランスよく作るのはなかなか難しいものです。変に恋愛方向へ振ると噓っぽくなりますし、かと言って淡々と語っても面白みに欠けます。

その点この作品は、まず恋愛方向へは一切振っていない(少しだけ、こもりが兄への感情を吐露するシーンもありますが、あれくらいなら十分許容範囲でしょう)のですが、それでいて退屈な話にはなっていません。こもりの、少し極端とも言えるキャラクター付けは最初は面食らうと思いますが、そのキャラクターが物語の重要なキーでもあります。

妹のコミュ力が皆無な件。こもりがちょっと極端なキャラであるのに対し、主人公である兄の明人を始め、他のキャラクターはしっかりした常識人の性格付けである上、各キャラクターの配置バランスがとてもいいと思います。変に受けを狙った、マンガ的な言動がないので、キャラクターにリアリティがあるのが好印象です。

特に、サブキャラではあるものの重要な役どころを担う優子は、とてもいいキャラクターです。この作品は選択肢一つで二種類のエンドに分岐するのですが、バッドエンドの方で優子が明人に言い放つ言葉は、プレイヤーの胸にもぐさりと突き刺さるかも知れません。本当に大事な事には、自分で向かい合わないといけないという事を、彼女は教えてくれます。

そしてグッドエンド。一見問題から逃げてしまったかに見えるこもりが、今度は優子のために勇気を出す場面が、この作品の一番の見どころです。ちゃんとこもりが、自分の力で問題を解決し、人間的にも一歩成長するところを見せてくれます。短編ですが、非常に構成の優れた作品だと思います。

結局、こもりにしても優子にしても、二人を本当の友達として結びつけたのは、二人の「自分がどう思われるかを気にせず、相手の事をまず思う心」だったように思うのです(主人公である明人もそうですね)。こういう友情は、きっと長続きするはずです。友情ドラマとして、短編でこれだけのメッセージ性を持たせ、かつエンターテインメント性も犠牲にしていないというのは、大した筆力です。

この物語は、見た目は萌え系のようにも見えますが、変にそういう方面に色気を出さなかったことが、優れたストーリー構成となった一因のように思えます。この作者さん、これが処女作との事なのですが、一作目でこれだけのものを書けるのですから、これ以降の作品も多いに楽しみですね。

主人公は徹頭徹尾妹を手助けする役目に終始するんですが、主人公にも少しいい目を見せてあげても良かったようにも思えます。ただ、これだけの短編ですから、そこまで盛り込むと話の焦点が定まらなくなった恐れがあるような気もしますし、これでいいのかも知れませんね。

ツールはティラノスクリプト。プレイ時間は20分から30分。選択肢は一箇所だけで、その選択肢でグッドエンドとバッドエンドに分岐します。後からバッドエンドを見てしまうとあまり収まりが良くないので、先にバッドエンドを見る事をお勧めします(恐らくどちらがバッドに行く選択肢なのかは、見ればすぐ分かります)。短編としては非常によくできた構成の秀作です。是非プレイしてみてください。
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