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「ゆめいろの空へ」のレビュー&感想【義弓くー】

ゆめ空1

みなさん、こんにちは。ショート100の人、義弓くーです。
メンバー作品紹介ということで、今回はこちらの作品をプレイ致しましたので、感想を!

タイトル:「ゆめいろの空へ」
制作  :NaGISA
ショート100メンバー_NaGISAさんの作品です

☆ふりーむ!DLはこちら☆



■どんなお話?
本作をまだ読んでいない方のために簡単にご説明しますと……。


大学生の青年「行人」はある日公園で、自身を天使と言う少女「スピカ」に出会います。
スピカの目的はその日に死ぬ予定の行人の魂を回収することとのこと。

しかし、幸運にも行人は死を回避します。
一方、不運にもスピカは天使として、行人の魂を回収するまで天界に帰還することができません。

帰還できず、行く当てのないスピカに行人は手を差し伸ばします。

そして、二人の不思議な共同生活が始まるのです。

ゆめ空3



■良かった所

☆構成
本作は1年間の物語を約20~30分程度の章分けで描いています。20分計算としても全体で4時間と、中々のボリュームですが、各章区切り良く終わるので、一日一章のような感じで少しずつ読み進められたのが良かったですね。

また、画面構成は「左に横書きの文章。右に背景画像」(立ち絵無し)です。感覚としてはノベルゲームというよりは、挿絵を見つつ音楽を聞きつつ小説を読んでいる感じでしたね。立ち絵がないからこそ、キャラの外見・所作・表情の想像を文章から膨らませることになります。それが、BGMと相まって物語への移入を高めてくれます。

本作が現代を舞台にし、天使の設定も突拍子もないものではないから故に、この立ち絵無し状況が活きているかなと思いました。もし、魔物が出るファンタジーで、文章からの想像だと、高確率で作者と読者間でイメージの乖離が起こると思うので。

本作の設定に適した「見せ方・戦い方」だと思います。


☆シナリオ
正直に言います……「終盤以降まとめ方がズルいです(いい意味で)」
作中のキャラクターと読者が積み上げてきた「思い」を一度は強く裏切り、突き落とすもそれを「切なくも」跳ねのける終わり方を示してきます。

実際に作中の年明け編くらいまでは、主人公とヒロインの距離が少しずつ縮まってゆく一般的な恋愛作品の流れなのですが、それが唐突に起こる「事件」と「明かされる真相」で急加速します。
それまで、ほのぼののんびりと淡い恋愛な感じだったゆえに、そのインパクトは大きく印象的でした。そして、それがそれまでの平和な主人公とヒロインの日常の幸せと尊さを、より際立たせてくれます。
そして、それはヒロイン「スピカ」と同時にサブキャラ「ロジータ」との和気あいあいとした温かい日々の尊さも、裏では描いています。


終盤で一気に化ける物語ゆえ、最後は寧ろ恋愛物であることを忘れるような熱い展開にもなります。そう……「恋愛物」だと思っていたのですが、全てを読み終えた今となっては「家族の物語」というイメージになりました。その理由は、読んだ人ならお分かりかと思います。



また、少し個別の場面になるのですが、私が読んでいて「あ、これ些細だけど、凄くいい場面だな」と感じたところがあります。

「天使にメリークリスマス 編」にて、スピカと千衿がプレゼントを買いに行くシーン。
千衿の「でも、スピカちゃんとこんなに仲良く話せるようになるなんてね。最初の頃『うわ、嫌われてる』って思ったもん」

……という台詞が、物凄く私の中に響きました。
スピカが心を開くようになっていることは行人が作中で示したり、読者にも伝わるのですが、それを【近い年代の友達】から面と向かって言われることに強い意味を感じました。初期は人付き合いを避けがちだったスピカが、こうして一緒に買い物に出かけて、何気ない会話の中で、それを相手から言われるというのは、そこに「分け隔てる壁がもう無い」という印象を受けます。

私はこの何気ない一言がこの物語の中で一番好きなシーン・台詞かもしれません。

ゆめ空2


☆キャラクター

主人公の「行人」やヒロイン「スピカ」の他にも多くのキャラが密接に物語に関わり、各人にもそれぞれの人間関係や物語があり、よくできています。

その中で、私が一番好きなキャラは「ロジータ」ですね。
彼女はスピカの先輩天使で、姉御肌な性格で何かと行人とスピカにお世話を焼いてくれます。特に、恋愛周りでは、奥手の二人の背中を後押しするように、恋愛環境(手を繋いだり、マフラーの件)を強引に作ったりします(笑)
役割的には、物語の恋愛環境を展開するのは勿論ですが、地上と天界を行き来できる存在として、後半部分では特に活躍を見せます。
本作は「行人とスピカ」の物語であると同時に「ロジータ」の物語でもあるという一面があります。裏主人公?裏ヒロイン?といってもよいかと思います。

もう別キャラを挙げますと……「大天使ヴィクター」と「天使長レオノーレ」のコンビが好きです(笑) 各章のラストの締めでこの二人のシーンが展開されるのですが、物語の裏事情を示すと同時に、コント?漫才?的なノリになる感じが、微笑ましくて面白いです。見事にヴィクターは部下であるレオノーレに一本取られている感じがします(笑)
天界は今日も平和だな~と感じたりします(笑)

ゆめ空4


……と共に、天界サイドのキャラクターになってしまいましたが、やはり個性的な設定ゆえにそう感じやすいのかもしれませんね。



■気になった所
お話としては、何気ない日常に、一つの不思議が混じり、そして切なくも美しく幕を閉じる本作ですが、【演出】の面でプレイ中に気になることがいくつかありました。
※私自身、演出周りを自作で気にするタイプなので、この辺りはよく見てしまいます。


・物語中では、展開に合わせて程よくBGMが変わり、そのシーンの臨場感や感情移入度を高めてくれます。実際、作中で「夕べ」と名前されている日常BGMがいい感じ。(後にショート100でも使用していることに気が付くのですが)
ただ、シーンや章の切り替えなどの際に“ブツ切り”になってしまうのが勿体なかったです。「シーンを閉じつつもBGMで物語の余韻を――」な状況でスパンとBGMが切れてしまうと、物語から弾かれた感じがしてしまいます。 リメイクや更新の際には、是非フェードアウト処理にしてほしい所かなと。


・ご存知の通り本作は「立ち絵が無い」作品です。立ち絵の有無のどちらが良い悪いというのはありません。どちらにも利点や欠点があります。
タイプによって、それぞれに適した「見せ方・戦い方」があるのです。

(無しの利点は、キャラの外見や所作が読者の脳内展開される点。立ち絵有りの場合、いつも同じ服で固定されたり、躍動感ある展開なのに、キャラ絵が動かずにある違和感など。一方の欠点は、表情や外見説明に文章を使うので、上手くやらないとテンポが遅くなることや、キャラのイメージを序盤で掴み損ねると、途中でそのズレに気づいたとき「あれ? そうだったっけ?」となります。……今回の場合、スピカの髪色は亜麻色と序盤で示されているのですが、どうにも私の脳内では途中まで黒髪のイメージで進みました&それに気が付いても黒のイメージが強く残ってしまい、脳内では黒髪で進んでいました)

……というのは、前置きでして、「背景画像の変化」がもう少しあっても良かったのかなと思いました。この作品は主人公とヒロインの1年間を描いています。
春夏秋冬にちなんだイベントもあります(夏祭りや、クリスマスなど)。お祭りやクリスマスはそのシーンに応じて、外出したりして背景が変わるので季節感を感じます。一方で、室内シーン等のイベント外の背景は同じものが続くのでそこが「一年間設定」の上では弱いかなと感じました。勿論、素材サイトの事情などがあるのは、私もノベルゲーム作者ゆえに痛い程分かります。
ただ、夏のシーンの行人の部屋にヒーターがあったり、夜や夕方などの時間帯なのに、明るい屋外や窓外になっている箇所があり、そことの文章と背景のズレが気になってしまいました。
例えば……、夏の屋内ならいつものリビング画像の他に、少しだけ「グラスに入った麦茶の画像」を挿んだり。バレンタインチョコを作るシーンなら「作りかけチョコ画像(今のご時世、フリー素材あるかも)」を挿んだりしたら、日常シーンでも緩急がつくのは勿論、季節感も示せるのかな?と個人的には思いました。



■まとめ

――といった感じで、だいぶ長くなってしまいましたがこの辺りで締めとさせて頂きます。
各章ごとに、様々なエピソードがあるので、是非まだの方はそれぞれを楽しんで欲しいですね。そして、それらの何気ない台詞や所作、シーンが物語の最後でプレイヤーの心にきっと響くはずです。プレイした方はきっとこの意味が分かるかと思います。

少々長めの作品ですが、少しずつ読めるような構成になっていますので、長編は得意ではないという方でも大丈夫かと思いますので、是非読んでみてくださいね!
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作品紹介「夕焼けの詩」

こんにちは、八久斗です。

唐突ですが作品を一つ紹介しようと思います。
というのもですね、自己紹介記事で一番か二番目に大事なものを書き忘れていたことに今更気付いたのです。
ということで、フリーノベルではなくて商業漫画ですが、レビューとして書かせていただきます。

その名も、「夕焼けの詩」です。
「三丁目の夕日」と言ったほうが知っている方が多いでしょうか。少し前に映画化されましたね。自分は観てませんけど。
夕焼けの詩というのは単行本の名前で、その中に三丁目の夕日が入っているという感じですが、今となってはたぶん全部三丁目の夕日なので、ほぼ同じものを指しています。
作者は西岸良平氏。現在も連載中で65巻くらいまで出ているようです。

自分の親が西岸良平が好きで、家に他のシリーズも含めて全部あったんですよね。なのでこの人の漫画とともに育ったといっても過言ではありません。意識しているつもりはないですが、自分の作品や考え方にかなり影響を与えているかもしれません。

1話完結の短編集で、夕日町3丁目を舞台にしたノスタルジックな話が中心ですが、所々SFや時代劇なども混ざっています。ジャンルは人間ドラマが多いでしょうか。コメディー、青春、ホラー、なんでもありです。
どうでしょう、ショート・ショート・ショート100の企画にぴったりではないでしょうか?
個人的には41巻の「おばあちゃん子」が好きです。泣けます。
絵が独特なのでとっつきにくいかもしれません(特に2巻)が、慣れればすごく楽しく読めると思います。
短編集なのでどこから読んでもあまり問題はありません。お勧めは1巻と41巻、あとは三丁目の夕日の源流と言える3巻でしょうか。あとは夕焼けの詩じゃないですが同じ作者の「タイム・スクーター」「蜃気郎」「地球最後の日」あたりも面白いです。

うーん、紹介って難しい。著作権が怖くて画像使えないし、面白さがうまく伝えられないですが、とりあえず名作集でも何でもいいので1冊読んでみて欲しいな!
あ、でも50巻くらいから急につまらなくなる気がするので古いものをお勧めします。


ちなみにショート・ショート・ショート100は現在鋭意制作中!
現時点で29話完成しており、更に20話原案ができています。
ということは……あと51話は募集中ということだ!
みんな、ドシドシ応募してくれ!

「カンナガラのケモノ」のレビュー&感想【義弓くー】

カンナガラ4

みなさん、こんにちは。ショート100の人、義弓くーです。
メンバー作品紹介していこう作戦ということで、私も先日一作プレイをしました!

タイトル:「カンナガラのケモノ」
制作  :いねむりスフィンクス
ショート100メンバー_直弥さん

☆ふりーむ!DLはこちら☆



伝奇風&少年漫画的ノリなお話という紹介文に魅かれてこの作品をプレイしました。また、直弥さんの自己紹介ページに記載されていたのもきっかけですね。
私自身、「お化け×アクション」なお話を書いている人なのので、そういうのに興味津々なのです(^^)/


■簡易あらすじ
中学生陰陽師の主人公「城戸信次郎」と幼馴染のヒロイン「白金キョウ」運命を描く物語。
キョウは幼い日に、人造精霊「白虎」に取り憑かれ、命のタイムリミットが迫っています。
それを阻止するために信次郎は、ある陰陽術を習得する修行に打ち込んでいる日々を送っていますが、ある日彼らに白虎を巡る大事件が襲い掛かる……。

カンナガラ1


■バトル展開がとにかく熱いです!
“陰陽師”という言葉は聞いたことはあってもそれ以上はよく分からない……そんな状態でプレイを開始した本作ですが、十分楽しむことが出来ました。

カンナガラ3


主人公は様々な怪異を呪術や仲間との協力を駆使して祓ってゆきます。そのため、戦闘シーンへのなだれ込みや力の入れようが強く、文章上でのスピード感ある駆け引き展開は勿論ですが、画面の見せ方も上手かったです。感覚としてはRPG風の戦闘画面を展開させつつ、エフェクトと効果音で盛り上げてくれます。

また、主人公の周りに登場するキャラクター達が、ちゃんとそれぞれの個性や役回りをもっていて、物語に奥行きを与えてくれます。主人公の師匠や、不死身の青年、同級生など、意外なところでキャラ同士が繋がりを持っていたりします。

カンナガラ2


この物語では「精霊」が大きな役割を担っています。主人公サイドがそれを使役することもあれば、敵対者がそれを行使します。「人VS人」「人VS精霊」「精霊VS精霊」などのバリエーションある駆け引きは読んでいて楽しく「どうやって対処するんだろう」とワクワクしながら読み進められました。
特に、ラストの白虎戦は、相手が圧倒的に強すぎて主人公が歯が立たず、絶望落ちするのですが、そこからの切返しはメチャメチャ熱いです!


■その一方で、気になる点というのもありました
この物語、三人称視点で文章展開しているのですが、終盤になるまで主人公が画面に姿を見せません。それがどうにも一人称感と重なって、気になりました。

また、陰陽師設定もあり、ベースとなる知識が無いと理解が難しいかなと感じました。また設定解説の文章自体もやや硬めなのでこの辺りがもっとスムーズであれば私的には良かったかなと思います。
例えば、ノベルゲームなので、図やイラストを使って、ビジュアルで文章の補助をするなどあっても良かったかもしれません。属性の関連図とかですね。


■そして、全てが収束するラストへ
ある種のバッドエンドとも捉えられるのですが、主人公が陰陽師という特殊な家柄な設定上、これが逆転して、ある種のグッドエンドとして成立可能なのかもしれません。この表現だと「?」となりますが、この辺りは、是非プレイして確かめてみてください。

カンナガラ5


そして、エンディング後の日常を描いたエピローグが良かったです。ほんの少しの日常シーンなのですが、それが示す「成長と救い」が大きいと感じました。

…といった具合に、私なりの感想を書かせて頂きました。
「熱いバトル、駆け引き」が特に魅力の作品です。そんな作品を求めている方、是非プレイしてみてくださいね!

そして、おまけ編も忘れずにプレイをね!

全参加者のレビュー

こんにちは、NaGISAです。

この企画に参加する全員の方々のレビューが書けました。私のレビューブログ「NaGISA net」にアップしてありますが、こちらでもご紹介します。

・義弓くーさん
 ななしのおろち 春
 ななしのおろち 夏
 ななしのおろち 秋
 十三階段の花子さん
 メアリ☆クリスマス!
 オバケ×クリスマス!

・九州壇氏さん
 僕の愛する三匹
 吟遊詩人
 年末年始の恋模様
 乙女心と夏の空
 セイシュン真っ盛り!
 君と再会した日
 眠れない夜に

・オザキショウゴさん
 動脈と静脈
 ダークハーフ
 脳と手の仲介者は心でなくてはならない
 天国の回廊

・CILさん
 クロス×ヒート!

・直弥さん
 星の砂時計
 冬の最涯
 ゆきんこ-冬の幼馴染-
 モカブレンドをブラックで。
 野に咲く蓮華を手にとって

・ねこのさん
 Sake of you~始まりの季節から
 なつのおわりに
 ヒトナツの夢
 ほたるゆき -SnowSky Edition-
 ありすとーく
 ハッピーエンドに花を添えて

・さつきちさん
 妹のコミュ力が皆無な件。
 ××と過ごすクリスマス。
 イモウト及第点

・八久斗さん
 ヒツゼンセイ
 ミトコンドリアにかんずりを

・あほちゃんさん
 温かく、暖かい冬、なのか
 ひとでなく、ひとでなし

・あいはらまひろさん
 Beyond the summer
 Begin with you!
 夏色のコントラスト
 ちいさな春のラプソディ
 今宵サンタは街角で。

・神無月ミズハさん
 贖罪と命

・原すばるさん
 僕らのピーマン

・アクアポラリスさん
 さよなら、リアル
 FeARy-電子妖精の囁き-
 五月雨の記憶

・ヒビキソラさん
 SOLAR POWER
 ポックリが鳴った夏
 SOLAR MEMORY

・合作(私、あいはらまひろさん、八久斗さん)
 エイト・ストーリーズ

・合作(私、義弓くーさん、オザキショウゴさん、あほちゃんさん、ヒビキソラさん)
 ななつぼし

制作者の過去作品を読んでみて、作者さんなりの作風に思いを致すのもよし、意外な作風の違いを味わうのもよし。よろしければご参考にどうぞ。

レビュー「眠れない夜に」

2日連続になりますが、鉄は熱いうちにと言いますし、レビュー2作品目行ってみます。九州壇氏さんの「眠れない夜に」。作品の存在自体はずっと知っていましたが、やっとプレイできました。


眠れない夜に

眠れない夜に準推薦
製作者/九州壇氏(ダウンロード
ジャンル/幼馴染三角関係恋愛ノベル
プレイ時間/1時間15分

大学生の淳は、幼馴染の茜と、夜のドライブに出かけていた。以前と様子が変わってしまっても、茜は茜だ。そう言い聞かせながら、車を走らせる淳。時折昔の事を思い出しながら、車は夜の都市高速道路を走り抜けて行くが、眠れない夜は、まだ長かった。中盤以降の展開、巧妙な伏線から目が離せない、青春ノベル。

ここが○

・些細なところまで巡らされた巧妙な伏線。
・中盤以降の意外な展開。
・リアリティのある描写。

ここが×

・なんだかすっきりしない感のあるラスト。
・所々ウェイトが多いのが少し気になる。
・演出にもう少し凝ってもいいかも。

■目覚めの朝は君と二人で

この作者さんの作品をレビューするのは、これで7本目です。初期の頃から比べると、文章にしても、物語の作り方にしても、非常な進化が感じられます。それでいて、この作者さんならではの味は今作でも健在です。この作品は、いわゆる「幼馴染もの」ですが、切り口がちょっと変わっています。

切り口が変わっていると言っても、プロット自体がそこまで斬新という訳ではありません。ネタバレになるので書けませんが、今作の根幹を占めるシナリオ作りの手法は、過去の他作品にも散見されます。

眠れない夜にしかしこの作品は、巧妙な伏線の張り方や、キャラクターの心情描写の繊細さで、プレイ時間以上のボリュームを感じさせてくれる一昨となっています。実はこの作品、タイトル通り「一晩」の物語なんですよね。しかし、過去回想の入れ方・絡め方が上手く、実際のシナリオ量以上のボリュームを感じさせてくれます。

また、リアリティのある描写が上手いです。茜の病気についての描写もですが、心情描写にも妙な現実感があります。もちろん、描写の全てにリアリティが高い訳ではなく、ちょっと矛盾を感じさせるような箇所がなくもないんですが、全般にしっかり描かれているため、そこがあまり気になりません。

特にメインのトリック(?)は、手法自体は使い古されたものながら、淳が自分の願望を込めて現状を曲げて理解した、という設定は、説得力がある上に、前半にあまりヒント(?)がなくても唐突感がないという、非常に卓越した手法だったと思います。この辺り、前半の些細な描写も伏線になっていて、感心する事しきりでした。

構成も上手く、登場人物が基本的に3人しかいないのに、特に後半は一気に読ませてくれます。ラスト近くの、茜との最後のドライブシーンは、屈指の名シーンでしょう。描写が全般にリアリティがあるので、あのシーンにも非常に現実感があって、感動させてくれます。

また、茜と香澄の姉妹のキャラクター分け、二人の微妙な関係の描写がとても良いです。姉へのコンプレックスから素直になれない香澄。妹を大事に思いながら一歩踏み出せない茜。いい姉妹です。二人の絆の描写が後半の肝となりますが、シナリオ自体もさる事ながら、過去回想含め、二人の関係の変化、絆の描写がとても素晴らしい。主人公の淳が、影が薄く感じるほどです(笑)。

ただ、終わり方が少し釈然としない感があります。私の好みとしては、オチはきっちり決着がつく方が好みなのです。ラストで、屋台のおでん屋のちょっとおちゃらけた日常描写が入ってきたので、余計そう感じたのかも知れませんが(全部解決したならともかく、結局メインの事件は解決してないしなあ。でもあそこの描写自体は好きです)。

そこは読み手に委ねようという事なのかも知れませんが、せっかくなのでもう一歩先まで踏み込んで欲しかった気がしなくもありません。今回の物語の原因が、何ら動いていないので、その意味ではあと一歩足りない感じを覚えました。もっとも、この物語においてそんな事を言うのは、無粋かも知れませんが……。

それでも、作者さんのこだわりが随所に感じられる一本でした。プレイ時間は1時間15分〜30分くらいで選択肢もありませんが、読後は時間以上の満足感を感じさせてくれます。ツールはNScripterで、デフォルトのままですがプレイにストレスはありません。私は休日の真昼にプレイしてしまいましたが(笑)、タイトル通り眠れない夜にプレイする事をお勧めします。
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