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あいはらまひろのフリーゲームレビュー 【十三階段の花子さん2】


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【十三階段の花子さん2】義弓くー(
BLUE AZALEA)


■はじめに

こんにちは、あいはらまひろです。

ノベルゲームの魅力にもいろいろありますが、そのひとつに、文字だけでは表現しきれない様々な演出の楽しさというのがあります。

例えばBGMひとつで、シリアスなシーンもコミカルになりますし、表情だけでヒロインの感情を表現することもできる。もちろんノベルゲームの主軸はシナリオでありテキストですが、演出ひとつでそれをさらにパワーアップさせられるのです。

本作「十三階段の花子さん2」は、そんな演出の面白さを再発見させてくれる作品でした。前作でをプレイしたこともあってテストプレイをさせてもらったのですが、とても興味深い体験でした。

せっかくテストプレイで3周+完成作で1周もしたことですし、珍しく感想のメールでもと思ったのですが、作者さんからの要望もあって、感想というか雑感というか、レビューめいたことをこちらで書いてみることになりました。

極力ネタバレは避けつつ、以下わりと長めに続きます。


■前作「十三階段の花子」さんって?

メリーさんの電話、十三階段、赤マント。
ごく普通の小学校にいる、ごく普通のお化けたち。その正体はなんとかわいいお化け少女たちだったのです!

というわけで、このシリーズは学校の怪談にまつわる力を持った、お化け少女たちが主人公。前作では、夜の学校でお化け少女たちのコミカルな日常が描かれるのですが、なにやらとんでもない魔物があらわれて、知力体力お化け能力を駆使して戦いました。

本作はその続編にあたり、新キャラクターも登場して、コミカルでドタバタしつつ、さらに強い敵との熾烈な戦いも繰りひろげられます。もちろん前作をプレイしていなくても十分に楽しめるように、作中でもフォローがはいりますし、タイトル画面から前作をふりかえることができる親切設計にもなっています。

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■お化けもお腹がすく

主人公であるお化け少女たちは、お化けといえども女の子です。泣いて笑ってケンカして、果ては胸の大きさやら背の高さで大騒ぎ。どうやらお腹もすくようでお菓子を食べたり、家庭科室を勝手に使ってカレーを食べたり、トイレにだって行きます。さらに物語の序盤で、お化けの学校とか有給などという衝撃の言葉まで登場します。

例えば、大泥棒の三世や猫型ロボットみたいに、よく考えると無茶苦茶な設定ですが、日常を丁寧に描くことでうまく丸め込む物語世界に誘いこんでいます。

本作は、そのへんの導入がよくできていて、多少ギャグがすべってたり、きのこたけのこで、あたり前田のクラッカーしてたりしますが、冒頭の日常シーンが物語世界への楽しい導入になっていたと思います。

本作には人間が一人も登場しません。
ですが、お化け少女たちが人間以上に人間っぽく描かれていて、お化け少女という設定に有無を言わせず呑みこまれることになるので気になりません。

また、先輩後輩や対立といった人間お化け関係がはっきりしているので、物語を追いながら、次第に彼女たちの力関係や役割を理解していけるようにもなっています。物語の構造的にみると、このへんはなかなかのテクニシャンです。


■お化けもズルはしない

彼女たちは、怪異権限という能力を持っています。
例えば十三階段のお化け少女キザハシは『空踏』という怪異権限で、階段状のプレートを1枚作ることができます。

普段はそうした力を使って子どもたちをおどかしているのだと思いますが、このシリーズではその怪異権限を使って、自分たちが棲む小学校にあらわれた敵と戦うのがお話の軸になります。

怪異権限にはいろいろと凝った設定があるようですが、そのへんは情報量が多くて、1度ですべてを理解するのは無理でしょう。しかし、序盤である程度は説明されますし、立ち絵や演出が凝っているので、少なくとも何が起きているのかはわかります。

安心してください。読み進めるうちに、なんとなくわかってきます。もしわからなくても気にせずに読み進んで大丈夫です。起きている出来事を追いかけるだけでも、じゅうぶんに楽しめるお話です。気になったら2周目いってみましょう。3周すると境地に達するかもしれません。

さて彼女たちは、月に代わってお仕置きしちゃうような選ばれし戦士ではありません。人間よりはるかに打たれ強いようですが、戦闘要員ではないのです。おまけに怪異権限にも短所があって、例えばキザハシの出す階段プレートは13秒で消え、乗っていた者は落ちてしまいます。

そうした技の短所は明らかにされていて、時にはそれを逆手にとって敵と戦います。そして指揮官役・前線型・支援型といった役割にわかれ、互いの能力の欠点を補いながらチームワークで戦うのです。ご都合主義のズルい超必殺技はなく、戦いはフェアに描かれています。そこに好感を持ちました。


■敵は強いが強すぎた?

今回の敵は前作より強く、いわば裏ボス級の強さです。そのうえ、とある理由でさらに苦戦を強いられます。圧倒的不利ともいえる状況からの戦闘開始。これをどうひっくり返すのかという、なかなか燃える設定になっています。

しかしプレイヤーとは贅沢なもので、簡単に勝ってはつまらないくせに、なかなか勝てないのも落ち着かないものです。最終バトルの分量は、少し多かったようにも思いました。

とはいえ、戦いの状況は二転三転しますし、途中で緩急をつけて長丁場の戦いが単調にならないように工夫されています。ただ最後の怪異権限については、なんというか展開的には好きなのですが、ここはもっと強烈な伏線が欲しかったところでした。


■圧倒的情報量

設定だけが増えるばかりで作品が完成しない。ええ、身の覚えのある話でございます。設定が増えるほど、作者はそれを処理できずに身動きができなくなる。いわゆるエターナルになる原因のひとつですね。

しかし、この作品は違います。おそらくは、自ら湧きでる圧倒的な情報量と正面から立ち向かい、見事に勝利をおさめた作品なのではないかと思います。プレイヤーからすれば、情報量の多さにはただただ翻弄されるばかりですが、作る側から見ると、よくぞこの量を調理したものだという気持ちになります。

お化け少女たちの能力や設定、事件の真相や背景、お化け能力に隠された秘密などなど、すべてを把握しようなどと考えたら、一筋縄ではいきません。僕の理解力の問題かもしれませんが、3周目にしてようやく全容がつかめたような、気がしているような気がしている感じですが、まだ自信がありません。


■そこでしか味わえないもの

テキストは言葉遣いがとても個性的で、ある意味アクの強い文体です。ですが、難解というわけでもなく、擬音表現も多いので、とても作風にあっていると感じました。このへんは筆が走ってるなーとか、暴走してるなーという印象を受ける部分もあって、その熱量が羨ましくもありました。こういう作者が見せる凄みも、フリーゲームの面白さでしょうね。

いえ、無理してフォローしているわけではありません。上手い下手とは別次元で、この人のこの文章だから面白いとか、そういう楽しみ方もあります。およそ商業作品では出会えないような、そういうアクの強さに翻弄されるのも、フリーゲームの魅力でしょう。

誤解をおそれずに言えば、それはいわば珍味のようなものです。いったい誰がフグの卵巣を糠漬けにしようなどとしたのか知りませんが、そこでしか食べられないもの、好きな人は好きな味というものは確かにあって、それはそれで貴重です。


■こだわりぬいた演出

この作品の一番の魅力は、前述のとおり様々な演出にあります。効果音やBGM、背景や立ち絵といったものをどう使って、どう見せるのか。いわゆるお約束の使い方から一歩踏み出した、実に挑戦的な作品でした。この一点だけでもプレイしてみる価値はあると思うくらいです。

僕はテキストを補う程度のあっさりとした演出を好みますが、なるほどこういうのもアリかと考えを改めました。僕はテキストを主役とすれば演出は脇役という考え方ですが、本作ではテキストが主役であり、演出は相棒といった感じでしょう。


十三階段の花子さん2

例えば、こんな感じの画面のコマ割りや立ち絵の一部を見せるような構図、細かく変化する背景、効果音やBGMとタイミングをあわせた演出などなど、まさに演出の宝石箱というかアイディアの総合商社というか、盛りだくさんです。

おまけに立ち絵は、すべて自作されていて、それをうまく使った1枚絵的な演出もたくさんあります。作業量は半端なかったでしょうが、おかげで見ごたえ十分の作品になっていたと思います。

ただ残念ながら、日常シーンにおいては、そのこだわりの演出が続くあまり、インフレ―ションというか、ゲシュタルト崩壊というか、どうにも過剰になっていました。さすがにガラスは何度も割れ過ぎですね(笑)お掃除が大変。

日常シーンはやりとりがじゅうぶん面白く、ギャグもしっかりすべっている、もとい、面白いですし、立ち絵の表情もコミカルに変わるので、そこは演出を控えめにしてもよかったと思います。ちょっと、もったいないお化けでした。

もっとも、その過剰とも思える演出が、その後のバトルシーンでは、むしろ迫力を増す効果となっているので、そのへんのさじ加減は難しいものだなと思いました。


■その他

4人のお化け少女たちは、みんな個性豊かで存在感があります。個人的には指揮官役のメアリ推しですが、前作の主人公であったキザハシにはもう少し活躍して欲しかったかなと思います。

お化け少女たちの生態は謎に包まれたままでいいと思いますが、いつもは子どもたちをどんなふうに脅かしているのでしょうね。少しだけ描写はありますが、機会があれば彼女たちの日常、子どもとの触れ合いを読んでみたいところでした。


■さいごに

というわけで、長かったですね。僕がレビューを書くとこういうことになるということがわかりました。読んでくれた方、おつかれさまでした。ゆっくり目を休めてください。

ネタバレを避けようとしたら、物語の内容にはほとんど触れずに終わってしまいました。
さてさて、いったい何が起きて、どうなって、どう終わるんでしょう。
気になりますね。気になってください。

「十三階段の花子さん2」ふりーむのダウンロードページはこちらです。

前作から!という方は
こっちからどうぞです。
なお、例のレビューを読みたい方、
NaGISA netのレビューページはこちらになります。

それではこのへんで。
いやぁ、フリーゲームって本当にいいものですね!

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「竜使いと空」のレビュー&感想【義弓くー】

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みなさん、こんにちは。ショート100の人、義弓くーです。
メンバー作品紹介ということで、今回はこちらの作品をプレイ致しましたのでご紹介を!

タイトル:「竜使いと空」
制作  :あほちゃん
ショート100メンバー_あほちゃんさんの作品です

☆作品のDLはこちら☆


■どんなお話?

傭兵である主人公(女性)「アイリス」はある日、男性に振られた勢いに任せて、ドラゴン討伐の依頼に無謀にも単独で挑みます。

しかし、そこで彼女が出会ったのは件のドラゴン(正確にはワイバーン)と共に生活をする竜使いの男性「レイン」でした。

ドラゴン討伐のはずか、対峙の成り行きでレインのドラゴンに乗ることになったアイリスは……。


……といった導入のお話です。

ジャンルは、女性向けの恋愛ノベルです。
プレイ時間は45分~1時間程度。


■良かった所

☆読みやすいシナリオ

本作、女性向けノベル(乙女ゲーム)ではありますが、男性が読んでも問題なく楽しめます。

「なんでだろう?」と私なりに考えて感じたことを。

・恋愛要素をメインにしていない点

⇒この物語、基本的に恋愛要素は終盤に置かれています。それも、息苦しくない程度にです。
これを実現しているのは、主人公アイリスのキャラクター性だと思います。

アイリスの一人称視点で物語は進むのですが、終盤まで彼女はレインに対して恋愛感情を抱かずに進みます。彼女が抱くのは、レインという人間の人生への興味です。

“どうして竜使いになったのか?”、“これまでどうやって生きてきたのか?”といった興味を持って彼に接していきます。


故に、恋愛物としつつもその過程に恋愛を置いていないゆえに、ファンタジー物と捉えられたので読みやすかったのかと思います。(私自身、男性向け・女性向けを問わず、恋愛物を読むのは得意ではないので、そう感じます)


・レインは男に好かれる男

「!?」と思うかもしれませんが、これ重要です。
個人の感覚になりますが、レインって男に好かれるタイプの男キャラだと感じました(※変な意味ではなく)。

裏表がなく、面倒見の良い頼れる兄貴って感じです。
嫌味な言葉やカッコつけた台詞を言うこともなく、ただただ己の大切なものを心にもっていてそれの為に生きているカッコいい男と感じました。実際、彼の生活の中心は相棒のワイバーン“グランド”であり、そこに対してのドラマも語られます。

そんなこともあり、恋愛物ではありつつもそれが主張することがないため、読みやすかったのだと思います。

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☆細かくて、丁寧な演出

本作をプレイすると分かりますが、細かく丁寧な演出がいくつもなされています。
例えば……。

・レインがバツの悪そうなときは、実は目を左に逸らしていたり……。

・グランドに乗って空を飛ぶシーンでは、集中線でスピード感の演出、および画面を小刻みに揺らすことで“生き物に乗っている”状況を視覚的に示してくれています。

・瞬きをするシーンは、画面が実際にパチクリ。

・キャラクターの動きを示すために、立ち絵の移動や縮小拡大表示。


私自身、己の作品制作では演出を気にする方ですが、今作は「主人公視点」であることを意識させるような動的演出がいくつもなされており、感心するとともに、その臨場感の出し方は見習いたいとも感じました。


特に、空を飛ぶシーンは本作で最も動きのあるシーンであり、爽快感をプレイヤーに感じさせる工夫がなされていてグッドです。

また、本作テキストウインドウが無い代わりにテキスト後ろには薄めの透過枠?があります。
つまり、背景を存分に感じさせる作りです。

偶然かもしれませんが、そのおかげもあり、空のシーンの効果が高まっていたのも良かったです。

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■気になった所

☆画面構成

本作で「惜しい!」と思ったのが画面構成です。
「1280×720」ウインドウ&テキスト下表示構成&キャラクターの頭身&レイン・グランドの表示位置の関係で、前述した「丁寧な演出」の一部の効果が十分に発揮できていないと感じました。

具体的には「プレイヤーの目線が画面左下に寄りがち」問題が発生しています。

本作、台詞や状況に合わせてレインの表情が細かく変化します。それこそ私が感動した“目を逸らす”表情ですね。

画面構成の問題で、どうしても視点はテキストが表示される左下によってしまい、レインの表情変化まで目が行きません。

読みやすいように、中央付近で改行を入れたり、短い文を重ねることで、「テキストを読む」という点での工夫はグッドです。ただ、これが表情切り替えの認識に対してはマイナスに働いています。

同様の画面サイズ・構成の作品は他にもありますが、件の問題を回避しているものはあります。しかし、本作はそれが別の2点によってより困難なものとなっています。

1:レインのキャラクターデザイン
レインは大柄な男で、それを示すために画面の縦方向いっぱいに画像が表示されています。つまり、顔の位置が高く、文字から最大限に離れてしまっています。

また、巨漢を強調するために、顔は小さめとなっています(目はさらに小さく)。ゆえに、表情を変えたとしても、それを視覚が拾いにくいのです。


2:グランドの存在ゆえのレインの立ち絵位置。
本作では、レインの相棒のワイバーン:グランドが多く画面に登場します。その関係で、グランドが中央、レインは右端に立ち絵が出ることがほどんどです。

テキストの関係で視点が左下に行くのに対し、肝心のレインの顔は画面右上になります。さらに、画面サイズおよび、比率の関係が相まって、その表情を拾いにくくしています。


☆解決策のヒント
※1:全画面テキスト表示形式なら、この問題は回避できたかもしれません。
※2:似た画面構成の作品。(ショート100組で言うと「ハッピーエンドに花を添えて」では、キャラクターの目が大きい事やテキストの横表示の位置、キャラクターの顔位置の高さ等により、その問題は感じませんでした)


■最後に

……といった感じで、私なりにプレイした感想を書かせて頂きました。

私としては演出周りの丁寧さに感動したので、是非その辺りを感じて欲しい作品かなと思います。

また、ワイバーン「グランド」の迫力も感じ取ってほしいですね。
中々あのような迫力あるキャラクターを描くのは難しいのではと思います。そのあたりの熱意もグッド。

(※私の“ある作品”にも龍とか出ますが、アレはフリー素材を加工したものです。そういう意味でも、ワイバーンを描き切ったのは個人的にカッコよく感じています)


女性向けノベルではありますが、男性でもちゃんと楽しめる作りになっていますので、皆さまプレイしてみてくださいね!

「たまゆらの夜」のレビュー&感想【義弓くー】

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みなさん、こんにちは。ショート100の人、義弓くーです。
メンバー作品紹介ということで、今回はこちらの作品をプレイ致しましたのでご紹介を!

タイトル:「たまゆらの夜」
制作  :アクアポラリス
ショート100メンバー_アクアポラリスさんの作品です

☆作品のDLはこちら☆


■どんなお話?

主人公の大学生の青年(秋月 響)は自分以外の人間が全て消え、すべての時間が止まってしまった世界に迷い込みます。
人と関わるのを嫌う青年にとってそれは理想の世界であり、それを受け入れます。しかし、そんな世界で彼は、その世界を作り出した神様を名乗る少女(玉響姫_タマ)と出会い――。

■良かった所

☆シナリオ
この作品、おそらく多くの人は序盤の状況説明を受けた後に、物語の最終目的地を想像できると思います。言ってしまえば、「主人公の成長&ヒロインの決断」の物語です。……ですが、その結果に至るまでの過程がコミカル&時にはシリアスに描かれており、それがプレイヤーの心を楽しませ、揺さぶります。
ヒロインは神様ですが、無邪気な女の子として描かれているので、斜に構えた捻くれ主人公をいい感じに振り回すのもまた面白かったです。

また、最終的にはプレイヤーが思い描き望んだ結末へとたどり着くでしょう。そして、主人公の後日談があります。……がその後のエンドロールで「ちょこっと裏切る」のは、見事に私は一本取られました。
「そう上手くは行かないか~」と。でも、現実という土俵にちゃんと主人公を戻す意味で良い裏切りだと思います。
詳細は是非プレイしてみてくださいませ。

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☆演出
・雰囲気づくりに対する演出が抜群に良かったです
とにかく「神様の力によって、人が消え、時が止まった世界」という神秘的な世界を静かなBGMやフワッとしたOPムービーなどで、プレイヤーに上手く伝えてきます。

・物語舞台の多様性とギャップ
また、住宅地や神社・森など、人工的だったり神秘的、自然的な舞台を行き来するのも緩急が付いており良かったです。不思議な世界をいろんな角度から見せてくれます。
また、神様であるタマが洋服店に行ったり、学校に行ってみたりなど神様らしからぬ興味や行動をとる所もギャップがあり静かな世界ではあるけれど、どこか温かみや楽しさがありよかったですね。
個人的には、いわゆる「クソダサTシャツ」の件がお気に入りです。

↓これが、例の問題のTシャツです。独特なセンスをお持ちです
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・細かい所にも手を加えてある点
メニュー画面やセーブ・ロード画面及び使用フォントもデフォルトのものでななく、この物語用に設定しているのはグッドです。ただ、できればゲームの起動アイコンもこだわってオリジナルのものにすれば尚良しかなと思いました。(プレイヤーが一番最初に目にする部分なので)

また、台詞等のクリック事に改行処理がなされており、読みやすかったです。次の文章の出現位置が目で追いやすかったです。
私自身このやり方はやったことがないのですが、こういうのもやり方の一つだなと、作者目線で気づきがありましたね。

・最後に色と時を取り戻す世界
終始において夜世界で物語は進みます。つまりは色のない世界です。それが最後には色を取り戻した世界になります。これまで溜め込んできた言ってしまえば、抑圧が解放される感じです。この感覚は物語のハッピーエンドを示すとともに、主人公の見る世界が変わったことを示唆する様にも感じられましたね。
ただ、もう一つ欲をいうと、夜明けを迎え世界が終わるその時の演出として、作中の幾つかの舞台(神社、団地、学校……等)が色を得るOR白く染まって消えゆく様子をフェード処理あたりで示すのも良かったかな?とは個人的には思いました。


■気になった所

・タマの言動設定
主人公とタマの最初の出会いで、その世界に関する説明がなされるのですが、その際に神様であるタマの口から「アップデート」「リセット」といった割とIT系のカタカナが飛び出します。神社&神様という設定を踏まえるとどうにもアンバランスな言葉かな、と感じました。

・世界観の一部設定
人がいなくなり、時間が止まった世界という特殊な設定上、細かい所までそれを詰め読者を納得させるのは非情に難しい所です。ゆえに、この場合へたに多くは語らず必要な箇所の風呂敷だけを広げるようなやり方が一つの手です。……というのも、序盤にて主人公が電気ポットを使用するシーンがあるのですが、それに対して私が思ったのは「人は消えたのに、電気は生きてるの?」でしたので。些細なことですが、何かのヒントなのかな?程度には考えてしまいました。

……と言った感じに色々と書かせて頂きました。本当は、絵が魅力的、一枚絵も効果的に働いている等々ありますが、その辺りはもう、プレイすれば一目瞭然に各々が分かると思いますので割愛致します。


正直に言って、綺麗にまとまり、スッキリとした気持ちになれる作品です。
皆さま、是非プレイしてみてくださいね!

「ゆめいろの空へ」のレビュー&感想【義弓くー】

ゆめ空1

みなさん、こんにちは。ショート100の人、義弓くーです。
メンバー作品紹介ということで、今回はこちらの作品をプレイ致しましたので、感想を!

タイトル:「ゆめいろの空へ」
制作  :NaGISA
ショート100メンバー_NaGISAさんの作品です

☆ふりーむ!DLはこちら☆



■どんなお話?
本作をまだ読んでいない方のために簡単にご説明しますと……。


大学生の青年「行人」はある日公園で、自身を天使と言う少女「スピカ」に出会います。
スピカの目的はその日に死ぬ予定の行人の魂を回収することとのこと。

しかし、幸運にも行人は死を回避します。
一方、不運にもスピカは天使として、行人の魂を回収するまで天界に帰還することができません。

帰還できず、行く当てのないスピカに行人は手を差し伸ばします。

そして、二人の不思議な共同生活が始まるのです。

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■良かった所

☆構成
本作は1年間の物語を約20~30分程度の章分けで描いています。20分計算としても全体で4時間と、中々のボリュームですが、各章区切り良く終わるので、一日一章のような感じで少しずつ読み進められたのが良かったですね。

また、画面構成は「左に横書きの文章。右に背景画像」(立ち絵無し)です。感覚としてはノベルゲームというよりは、挿絵を見つつ音楽を聞きつつ小説を読んでいる感じでしたね。立ち絵がないからこそ、キャラの外見・所作・表情の想像を文章から膨らませることになります。それが、BGMと相まって物語への移入を高めてくれます。

本作が現代を舞台にし、天使の設定も突拍子もないものではないから故に、この立ち絵無し状況が活きているかなと思いました。もし、魔物が出るファンタジーで、文章からの想像だと、高確率で作者と読者間でイメージの乖離が起こると思うので。

本作の設定に適した「見せ方・戦い方」だと思います。


☆シナリオ
正直に言います……「終盤以降まとめ方がズルいです(いい意味で)」
作中のキャラクターと読者が積み上げてきた「思い」を一度は強く裏切り、突き落とすもそれを「切なくも」跳ねのける終わり方を示してきます。

実際に作中の年明け編くらいまでは、主人公とヒロインの距離が少しずつ縮まってゆく一般的な恋愛作品の流れなのですが、それが唐突に起こる「事件」と「明かされる真相」で急加速します。
それまで、ほのぼののんびりと淡い恋愛な感じだったゆえに、そのインパクトは大きく印象的でした。そして、それがそれまでの平和な主人公とヒロインの日常の幸せと尊さを、より際立たせてくれます。
そして、それはヒロイン「スピカ」と同時にサブキャラ「ロジータ」との和気あいあいとした温かい日々の尊さも、裏では描いています。


終盤で一気に化ける物語ゆえ、最後は寧ろ恋愛物であることを忘れるような熱い展開にもなります。そう……「恋愛物」だと思っていたのですが、全てを読み終えた今となっては「家族の物語」というイメージになりました。その理由は、読んだ人ならお分かりかと思います。



また、少し個別の場面になるのですが、私が読んでいて「あ、これ些細だけど、凄くいい場面だな」と感じたところがあります。

「天使にメリークリスマス 編」にて、スピカと千衿がプレゼントを買いに行くシーン。
千衿の「でも、スピカちゃんとこんなに仲良く話せるようになるなんてね。最初の頃『うわ、嫌われてる』って思ったもん」

……という台詞が、物凄く私の中に響きました。
スピカが心を開くようになっていることは行人が作中で示したり、読者にも伝わるのですが、それを【近い年代の友達】から面と向かって言われることに強い意味を感じました。初期は人付き合いを避けがちだったスピカが、こうして一緒に買い物に出かけて、何気ない会話の中で、それを相手から言われるというのは、そこに「分け隔てる壁がもう無い」という印象を受けます。

私はこの何気ない一言がこの物語の中で一番好きなシーン・台詞かもしれません。

ゆめ空2


☆キャラクター

主人公の「行人」やヒロイン「スピカ」の他にも多くのキャラが密接に物語に関わり、各人にもそれぞれの人間関係や物語があり、よくできています。

その中で、私が一番好きなキャラは「ロジータ」ですね。
彼女はスピカの先輩天使で、姉御肌な性格で何かと行人とスピカにお世話を焼いてくれます。特に、恋愛周りでは、奥手の二人の背中を後押しするように、恋愛環境(手を繋いだり、マフラーの件)を強引に作ったりします(笑)
役割的には、物語の恋愛環境を展開するのは勿論ですが、地上と天界を行き来できる存在として、後半部分では特に活躍を見せます。
本作は「行人とスピカ」の物語であると同時に「ロジータ」の物語でもあるという一面があります。裏主人公?裏ヒロイン?といってもよいかと思います。

もう別キャラを挙げますと……「大天使ヴィクター」と「天使長レオノーレ」のコンビが好きです(笑) 各章のラストの締めでこの二人のシーンが展開されるのですが、物語の裏事情を示すと同時に、コント?漫才?的なノリになる感じが、微笑ましくて面白いです。見事にヴィクターは部下であるレオノーレに一本取られている感じがします(笑)
天界は今日も平和だな~と感じたりします(笑)

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……と共に、天界サイドのキャラクターになってしまいましたが、やはり個性的な設定ゆえにそう感じやすいのかもしれませんね。



■気になった所
お話としては、何気ない日常に、一つの不思議が混じり、そして切なくも美しく幕を閉じる本作ですが、【演出】の面でプレイ中に気になることがいくつかありました。
※私自身、演出周りを自作で気にするタイプなので、この辺りはよく見てしまいます。


・物語中では、展開に合わせて程よくBGMが変わり、そのシーンの臨場感や感情移入度を高めてくれます。実際、作中で「夕べ」と名前されている日常BGMがいい感じ。(後にショート100でも使用していることに気が付くのですが)
ただ、シーンや章の切り替えなどの際に“ブツ切り”になってしまうのが勿体なかったです。「シーンを閉じつつもBGMで物語の余韻を――」な状況でスパンとBGMが切れてしまうと、物語から弾かれた感じがしてしまいます。 リメイクや更新の際には、是非フェードアウト処理にしてほしい所かなと。


・ご存知の通り本作は「立ち絵が無い」作品です。立ち絵の有無のどちらが良い悪いというのはありません。どちらにも利点や欠点があります。
タイプによって、それぞれに適した「見せ方・戦い方」があるのです。

(無しの利点は、キャラの外見や所作が読者の脳内展開される点。立ち絵有りの場合、いつも同じ服で固定されたり、躍動感ある展開なのに、キャラ絵が動かずにある違和感など。一方の欠点は、表情や外見説明に文章を使うので、上手くやらないとテンポが遅くなることや、キャラのイメージを序盤で掴み損ねると、途中でそのズレに気づいたとき「あれ? そうだったっけ?」となります。……今回の場合、スピカの髪色は亜麻色と序盤で示されているのですが、どうにも私の脳内では途中まで黒髪のイメージで進みました&それに気が付いても黒のイメージが強く残ってしまい、脳内では黒髪で進んでいました)

……というのは、前置きでして、「背景画像の変化」がもう少しあっても良かったのかなと思いました。この作品は主人公とヒロインの1年間を描いています。
春夏秋冬にちなんだイベントもあります(夏祭りや、クリスマスなど)。お祭りやクリスマスはそのシーンに応じて、外出したりして背景が変わるので季節感を感じます。一方で、室内シーン等のイベント外の背景は同じものが続くのでそこが「一年間設定」の上では弱いかなと感じました。勿論、素材サイトの事情などがあるのは、私もノベルゲーム作者ゆえに痛い程分かります。
ただ、夏のシーンの行人の部屋にヒーターがあったり、夜や夕方などの時間帯なのに、明るい屋外や窓外になっている箇所があり、そことの文章と背景のズレが気になってしまいました。
例えば……、夏の屋内ならいつものリビング画像の他に、少しだけ「グラスに入った麦茶の画像」を挿んだり。バレンタインチョコを作るシーンなら「作りかけチョコ画像(今のご時世、フリー素材あるかも)」を挿んだりしたら、日常シーンでも緩急がつくのは勿論、季節感も示せるのかな?と個人的には思いました。



■まとめ

――といった感じで、だいぶ長くなってしまいましたがこの辺りで締めとさせて頂きます。
各章ごとに、様々なエピソードがあるので、是非まだの方はそれぞれを楽しんで欲しいですね。そして、それらの何気ない台詞や所作、シーンが物語の最後でプレイヤーの心にきっと響くはずです。プレイした方はきっとこの意味が分かるかと思います。

少々長めの作品ですが、少しずつ読めるような構成になっていますので、長編は得意ではないという方でも大丈夫かと思いますので、是非読んでみてくださいね!

作品紹介「夕焼けの詩」

こんにちは、八久斗です。

唐突ですが作品を一つ紹介しようと思います。
というのもですね、自己紹介記事で一番か二番目に大事なものを書き忘れていたことに今更気付いたのです。
ということで、フリーノベルではなくて商業漫画ですが、レビューとして書かせていただきます。

その名も、「夕焼けの詩」です。
「三丁目の夕日」と言ったほうが知っている方が多いでしょうか。少し前に映画化されましたね。自分は観てませんけど。
夕焼けの詩というのは単行本の名前で、その中に三丁目の夕日が入っているという感じですが、今となってはたぶん全部三丁目の夕日なので、ほぼ同じものを指しています。
作者は西岸良平氏。現在も連載中で65巻くらいまで出ているようです。

自分の親が西岸良平が好きで、家に他のシリーズも含めて全部あったんですよね。なのでこの人の漫画とともに育ったといっても過言ではありません。意識しているつもりはないですが、自分の作品や考え方にかなり影響を与えているかもしれません。

1話完結の短編集で、夕日町3丁目を舞台にしたノスタルジックな話が中心ですが、所々SFや時代劇なども混ざっています。ジャンルは人間ドラマが多いでしょうか。コメディー、青春、ホラー、なんでもありです。
どうでしょう、ショート・ショート・ショート100の企画にぴったりではないでしょうか?
個人的には41巻の「おばあちゃん子」が好きです。泣けます。
絵が独特なのでとっつきにくいかもしれません(特に2巻)が、慣れればすごく楽しく読めると思います。
短編集なのでどこから読んでもあまり問題はありません。お勧めは1巻と41巻、あとは三丁目の夕日の源流と言える3巻でしょうか。あとは夕焼けの詩じゃないですが同じ作者の「タイム・スクーター」「蜃気郎」「地球最後の日」あたりも面白いです。

うーん、紹介って難しい。著作権が怖くて画像使えないし、面白さがうまく伝えられないですが、とりあえず名作集でも何でもいいので1冊読んでみて欲しいな!
あ、でも50巻くらいから急につまらなくなる気がするので古いものをお勧めします。


ちなみにショート・ショート・ショート100は現在鋭意制作中!
現時点で29話完成しており、更に20話原案ができています。
ということは……あと51話は募集中ということだ!
みんな、ドシドシ応募してくれ!
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